扉を開けた瞬間に感じるインクの匂い。
がちゃん、がちゃんと響く機械の音。
なんだか懐かしい、ノスタルジックな佇まいに、心が躍った。
八戸在住のデザイナー、髙坂さんにお声かけいただき、市内にある武内印刷さんへ。
八戸ノ本室・髙坂さんはウミネコのフンをモチーフにした「フンノート」でグッドデザイン賞も受賞していて、八戸に帰ったらお会いしたいと思っていた方のひとりです(実は)。
八戸・長苗代にある武内印刷さん。これだけデジタルな時代でも、やっぱり紙とインクが好きなので、いつか行きたいと思っていた場所。
細かく分類された棚に納められた、ひとつひとつが文字。震災のときに棚から落っこちて、元に戻せていないものもたくさんあるそう。
髙坂さんがデザインする名刺を、武内さんが印刷する現場に同席させてもらいました。
これまで活版印刷って、「文字を組み合わせちゃったらあとは刷るだけ」と単純に思っていたら、もっともっともっと奥が深いものだった。
活字は長年使われ続けるとすり減っていくので、ただ活版にはめるだけではダメ。他の文字とのバランスを見るために、何回も何回も微調整をしていました。さらに、紙質やインクの濃さなどによっても刷り上がりが変わってくるのです。何回も何回も試し刷りして、逐一髙坂さんと確認しあっていました。
すごい職人技でした。
いまは便利なツールがたくさんあって、素人でもデザインできるし印刷もネットで簡単にできる。値段だけでみたら活版印刷はたしかに高いです。だけど、心を込めてモノを作ってる人がいて、さらにそれを伝承し続ける人がいて。この現場に触れたらなんて尊いんだろうと感じました。全然高くないよ、むしろ安い。
髙坂さんによると、今のところ残念ながら後継者はいらっしゃらないそうです。ここで途絶えてしまうのは、もったいないなぁと思います。いろんな可能性を探ってみたいと思っています。
まだまだ知らない、八戸の素敵な人たちがたくさんいる。いろんな人に出会いたいと思っています。